不思議な世界、普通の世界、あちこちで繰り広げられる極めて個人的な愛と成長の物語を集めた短編集。
【HORNET】アキレウス博士の作り出した不殺の銃弾は人が死なない戦争を作り出した。それは同時に終わらない戦争の幕開けでもあった。一九九二年、開戦八十八年目に入った世界に一人の若者は出征の時を待っていた。
【おかえり、私の王子様】俺様は鴉だった――。ニンゲンの森で生きる鴉と少女は、ゴミ捨て場の前で運命的な出会いを遂げる。
【カンニング】あれは社会のテストの時間だった。見てしまったんだ、クラスの優等生でお馴染みのあの子がある「悪事」をはたらく瞬間を。
【純な彼女を食らって書いた】新人賞作家になった旧友と再会した私。高校時代、二人だけの文芸部で送った青春の苦い記憶がよみがえる。
【王国復興譚 前章】辺境の村で母親と二人で暮らす少年は、帝国の魔の手から王国を救い出す使命を負った王家の末裔だった……。突然の来訪者によって明かされる、「母親」だと思っていた女性の素顔。
【五月闇】高校一年生になっておよそ一か月半。友達は増えたけど、その代わり一人だけ疎遠になった子がいる。五月の黄昏に放課後の街で染まる、なんてことないメランコリー。