初期の短編集。雨宿拾遺物語が創刊される前、つまり雨宿拾遺が雨宿拾遺たる前に書かれた作品。現在の作風につながるような源流が感じられる。執筆当時のテイストを残しつつ、掲載にあたって若干の加筆修正を行いました。
【つばくらめの仔】人の寿命が三十歳になった。人口の大半を失い、残された人々もわずかな時間を生きる定めを負った。それから百年、継承不能となったあらゆる技術は消失、文明は産業革命以前の水準に後退していた。この春に十二歳となって成人したアキは幼馴染との結婚が決まっていた。しかし古い文献を読んだ彼は失われた「青年期」を知り、この世界に疑問を抱くようになる。
【モーニングファイターズ】世界には朝食の目玉焼きに醤油をかける者とソースをかける者がいる。決して相容れないこの対立はやがて世界を二分する大戦争に発展した。ソース軍の一兵卒は敗走し一人彷徨う森で、醤油軍の一人の兵士に出会う。
【昨日の敵は今日の自分】全人類の身体と精神が入れ替わる、至ってよくある話だ。世界は大混乱に陥り、最終的に人々が下した決断は「これを『転生』とし、新しい『自分』」として受け入れる」というものだった。かくありて半年、小さな町の信用金庫に努める山下の一日が、今日も始まる。
【愛する君に真っ赤な薔薇を】重病に罹り余命わずかな「私」は家族にも見捨てられ虚しく時を過ごしていた。そんな中、病室の窓から見かけた、女学生の娘さんに恋心を抱く。娘さんを振り向かせるため「私」は見舞い品の薔薇の花束を窓から投げ、娘さんと知り合う。その薔薇は以前実家の女中だった女性から贈られたものだった。以来娘さんは「私」の病室へ度々訪れるようになった。
【雨上がりのピエロ】(約四万字)売れない大道芸人、大道亮安は公園で芸を披露していたある日、入院中の少女、鷹綱愛に出会う。愛に大道芸人のプライドを刺激された亮安はいつか自分の芸で愛を笑わせることを誓う。天気の変わりやすい不思議な町で繰り広げられる青年と少女の交流は、二人の世界を彩っていく。
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