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テラレジア・オーダー

テラレジア・オーダー

【不定期連載中】

王家の末裔アークと相棒のフェルドが繰り広げる活劇。スリルあり、アクションあり、ミステリーあり、ロマンスあり――昭和なオヤジギャグもモチロンあり。環大西洋世界の文化が絶妙に混ざり合ったロマンチックな国、テラレジアでの冒険をお楽しみください。

基本一話完結型の作品。どれから読んでも楽しめます。

・本作は不定期連載です。更新情報は毎月発行の雨宿拾遺物語をご確認ください。


ストーリー

悠久の時を超え、あのろくでなし二人組が帰って来た!?

1980年代の前半、大陸の西の果て、大西洋に面した国、テラレジア共和国。

かつて存在したテラレジア王家の正統な子孫アーク・ウエスト・〝テラレジア〟とテラレジア一の喧嘩屋フェルド・スターのもとには、現実の歪んだような様々な事件が舞い込む。

戦いのカギを握るのは、現実を塗り替える強い感情の力「オーダー」。

最新話(2025.3.2更新)

アーク・ウエスト・  〝テラレジア〟

かつて存在したテラレジア王家の直系の子孫にあたる。王政廃止に伴い、王家は辺境の島に100年間の流刑に処された……が、このたび100年が経過したので首府に舞い戻ってきた。それ以来、太陽通りのとあるアパートの3階を拠点に、相棒のフェルドと共に「王政復古のための戦い」を続けている。

襟につけた「王珠(おうしゅ)」は王家の三宝の一つで、古くから王に強力な魔力を与えてきたとされる。アークはこれを利用して他人の現実を読み取ると共に、現実を塗り替える「オーダー」を使うことができる。

相手にオーダーを掛ける条件は「心にスキマを作ること」で、オーダーに掛かった相手は現実を支配され、アークの「思い通りにしか」ならなくなる。

フェルド・スター

いろいろあって10年間の懲役刑に服していた(本当は無実)が、めでたく刑期満了で出所した。この日はちょうどアークが100年の島流しから帰って来た日で、これまた偶然その日に出会ってしまった二人は、首府の下町から「王政復古のための戦い」を始める。

「売られた喧嘩は買う」がモットー。腕っぷしの強さだけではない、ピンチを切り抜ける機転も持ち合わせ、アークのオーダーが合わさった時、無敵の強さを発揮する。

カノン・ライカ

大手新聞テラレジオ・ポスト社の首府分社(アーク&フェルドが住むアパートの下の階にある)に勤める記者。「王の活躍を知らしめる」という目的のもと、二人の活躍を描いた連載記事「テラレジア・クロニコ」を執筆している。(ほぼ実録の「記事」だが、ほとんどの読者は「小説」だと思っている。)

いつも持ち歩くポラロイドカメラは亡き父が最後にくれたプレゼント。歪んだ現実の中でも、写真に撮れば正しい姿を写し出すことができる。アーク&フェルドの妹分としていろいろ振り回されているが、持ち前の明るさとここぞという時の判断力は二人を大いに助けている。

エリセア

テラレジア清教の尼で、太陽通りの坂のてっぺんにあるサンルーモ教会を管理している。一年前は清教の総本山、バロン大聖堂で修行の身だったが、修行を終えて今の教会に赴任した。尼僧のくせにアークと親密な関係にある破戒尼(あくまで〝プラトニック〟らしいが、それでもダメなものはダメ)。

実はテラレジア王家の分家の末裔で、わずかながら王家の血を引く。フェルドの幼馴染でもあったのだが、いろいろあって家族を亡くし尼寺に引き取られた。在俗の頃の名は「エリセア・メノブロード」。厳しくも優しい性格や、尼僧として強い霊力を持ち、様々な方面からアーク&フェルドを支えている。

ローガン・モルド

テラレジア共和国の前大統領。いろいろあってその座を退き、今は行方知れず。元はと言えばアークたちの敵みたいな存在だったのだが、それも今は過去の話。どこにもいないのに、どこにでもいてそばで見守っている……気がする。

かつてはカノンの父であるフリーカメラマン、カリス・ライカと共に国中を駆け巡っていろいろやっていたらしい。その頃の縁があって、アーク、フェルド、カノン、エリセアの4人には並々ならぬ思い入れがある。


オーダーとは?

「オーダー」とは本作に登場する特殊な心理作用のこと。ひとことで言い表すなら「現実を塗り替える強い感情の力」です。

ものすごーく大雑把に説明すると、アークはこれを使って敵を自分の思い通りにさせている、まさに彼の切り札です。


これから詳しく説明しますが、その前にまずは「歪んだ現実」というものについて理解する必要があります。


人はときどき、自分の感情に左右されて「真実とは違う光景」を見ることがあります。

暗闇をひどく恐れていれば、そこにいないはずの幽霊が見えるかもしれません。

強く怒ったり、ものすごくあせった時、周りを気にする余裕がなくなってそこにある物も見えないかもしれません。

大切な人の死を受け入れられない人は、帰るはずのない存在を信じ続けるかもしれません。

本当はそこに「ない」はずのものが、その人にとっては「ある」(またはその逆)、そういう「その人だけが見ている現実」のことを「歪んだ現実」と言います。


いわば「思い込み」から現れる「歪んだ現実」、このことに本人が気付くことは難しいです。他人に指摘されたくらいで元に戻るようなものではありません。カメラで写真を撮って今一度本当の光景を思い出すとか、少し工夫する必要があります。

当然ですが、「歪んだ現実」はその人以外には見ることができません、「オーダーにかかった時」という例外を除けば。


こうした「歪んだ現実」を前向きな感情から能動的に生み出した場合、それを「オーダー」と呼びます。


オーダーは愛、勇気、希望とか「お前に勝ってやるぞ」という強い感情から生まれます。そうした強い気迫は相手の心を呑み込んでしまいます。これが「オーダーにかかる」ということです。

オーダーにかけられた人は相手に心を奪われてしまい、相手が見ている「歪んだ現実」と同じものを体験します。

例えばAさんとBさんが剣を持って戦っていて、ここでAさんがBさんにオーダーをかけました。この時BさんはAさんの見ている「歪んだ現実」に取り込まれます。Aさんは「俺の剣はBの剣より強いんだ」と思い込んでいますから、Bさんにとってもその通りになり、Bさんの剣はAさんの剣より「弱くなる」のです。本当は何も変わっていないのに、戦う二人にとってそういう共通認識が生まれてしまったのですから、勝負の行方は決まったようなものです。

こうやって聞けばオーダーがいかに強力なものか想像できるでしょう。


王家の後継者であるアークは王珠の力を借りて強力なオーダーを発動することができます。かけられた相手はもはや「アークの思い通りにしかならない」のです。(だから本当なら一瞬で戦意喪失させることもできるのですが、アーク&フェルドは敢えてそこまではせず、コテンパンにブチのめして楽しんでいます、性格悪いね。)

そしてその逆も同様。アークたちが敵のオーダーにかかってしまえば、その心と体に強力な制約を課せられ、勝利は絶望的になります。

オール・オア・ナッシング、やるかやられるかの極限的な戦いです。


相手をオーダーにかけるためのただ一つの条件、それは「心のスキマを作ること」です。

「心のスキマ」の作り方はいろいろあります。「相手に『負けた』と思わせる」「気迫で相手を圧倒する」「相手を油断させる」「策略にハメて騙す」などがよくあるやり方ですが、他にも「ルールに則った勝負で反則負けさせる」とか「相手がこちらに心を開いた」とかでもいけます。逆に、これらを達成したとしても相手がちょっとやそっとのことに動じない強靭な精神力を持っているなら、心のスキマを作るのは難しいことです。

とにかく、なんでもいいから相手の心にスキマを作ること、そしてこちらは何があっても動揺しないこと。思いもよらない勝利の道を探してアーク&フェルドは戦い続けます。


いかにもファンタジーのお話っぽいですが、オーダーはみなさんの世界にもちゃんと存在しますよ。みなさんはものすごい剣幕で叱られて何も言い返せなくなってしまったことや、大声で泣いている人を見てなぜだか自分も悲しくなってきたことはありませんか?

それもある種のオーダーの力です。


なお、「オーダー」という名前はローガンが勝手に名付けたもので、アークたち以外はその名前すら知らず、ほぼ無意識のうちに使っています。


王珠の力

アークがいつも襟元で輝かせている「王珠(おうしゅ)」についても説明しておきます。

王珠は元々テラレジア王家が持つ宝玉で、王冠、王笏と並んで王家の三宝と呼ばれ、最も重要な財産でした。王冠と王笏については王政廃止以来テラレジア共和国政府が保管していますが、王珠だけは小さいのでテラレジア王が密かに持ち出し、流刑先の島で大切に保管していました。今、王珠の所有権は王家の当代であるアークにあります。

王国時代の記録では「王珠は強大な魔力を持つ」とあります。実際に、アークと、常に一緒にいるフェルド、カノン、エリセアらは王珠の力によって他人が見ている「歪んだ現実」を体験することができます。

それが誰の「歪んだ現実」なのかは分からないし、そもそも他人の「歪んだ現実」を見ていることすらも何かのきっかけがなければ気付けません。しかし不便なことばかりではありません。「歪んだ現実」から推理することで、当人でさえ気付かない無意識の心の動きまでも読み取れるような、大きな手掛かりにもなるのです。


また、王家の血を引くアークは王珠の力を借りて普通の人々より圧倒的に強力なオーダーを発動することができます。(実はエリセアも先祖が王家の分家にあたるので、彼の王珠を借りて同じ力を使えます。)

どうやら歴代の王も王珠の力を借りながらオーダーという名の強いカリスマを発揮し、代々王国を治めてきたようです。

シガヒニ王国の若き国王夫妻

アジアの小国、シガヒニ王国の国王と王妃。「テラレジア・クロニコ」の大ファン。国賓としてテラレジアに来た時には誘拐されちまったことがある。(『東方より王来たる』)

連絡先

↑の件以来シガヒニ王宮直通のホットラインができた

主な登場話

東方より王来たる

首府警察の刑事 事件の捜査担当

本名シルバーソフィア・マルヴィナス。正義感に溢れた絵に描いたような刑事。マルヴィナス大統領の末娘でマジに箱入りなところが玉にキズ。

連絡先

A34-7251 ←首府警察刑事課(署に着歴が残る)

76D-4A22 ←マルヴィナス家(使用人が出る)

主な登場話

煌めきの麗嬢刑事

首府警察の万年ヒラ刑事

シルビーのバディ。難事件に遭遇する度「王様案件」といって仕事を押し付ける職務怠慢デカ。「ボス」の名は本名「クリヤボス」から取ったもので本人はヒラ。

連絡先

A34-7251 ←首府警察刑事課

(署に着歴が残るのでゴニョゴニョな話は公衆電話から掛ける)

主な登場話

煌めきの麗嬢刑事

軍人堅気なテラレジア共和国大統領

本名トッド・マルヴィナス。マルヴィナス家の家長で大統領。元陸軍第一師団長で、ひょんなことから臨時で大統領に就いたがなまじ国民人気があるのでそのまま落ち着いてる。

連絡先

E85-3A7B ←大統領府の非公式電番

76D-4A22 ←マルヴィナス家(使用人が出る)

主な登場話

東方より王来たる

人気絶頂のアイドル 愛称〝メルメル〟

かわユい歌と踊りで大人気の国民的アイドル。花も恥じらう17歳。執拗な脅迫状の被害に遭っていたところを解決してやった。(『歌姫は透明に消ゆ』)

連絡先

レコード会社「ステルレコ」 ←マネージャー

2F3-1857 ←下宿の電番

主な登場話

歌姫は透明に消ゆ

テラレジア・クロニコ

『テラレジア・オーダー』の前作。本作の1年前、アーク&フェルドが出会った頃からのお話。非常に難解かつトリッキー、たまにメタフィクショナルな作品構成は連載当時から話題だった、雨宿拾遺物語の問題作。


テラレジアの歩き方 1982年版

作品の舞台となる国「テラレジア共和国」にまつわるあれこれをまとめたガイドブック「テラレジアの歩き方 1982年版」を特別公開!これを読めばあなたもテラレジア通……!?


読切短編「アーク&フェルド」

『テラレジア・クロニコ』の原案となった読切短編「アーク&フェルド」。

太陽通りの一番地で頽廃的な生活を送っている王家の末裔アークとテラレジア一の喧嘩屋フェルドは、新聞社の新米記者カノンが持ち込んだ記事で、百貨店の高級ブランド品が次々に盗まれている事件を知る。事件の真相を探るため、彼らは百貨店「エクツェレンツォ」を訪れるが……。