オルセーネ・ライカと申します、南部グリム県の片田舎で暮らしとります。
娘は首府でテラレジオ・ポストの記者をやっとります。カメラマンで物書きをしていた主人の影響のようです。
主人は一年の半分以上は外に出ているような者で、方々を訪れて取材をしては持ち帰った写真をあたしらに見せ、その時の体験を語っておりました。暮らしは楽ではなかったので、家族旅行なんかは本当に数えるくらいしか行ったことはないけんど、「世の中にはこんなものもある」と興奮気味に語るあの人の話を聞いては、自分もそこへ出かけたような感傷に浸ったものです。
世間様から見ればろくでもない亭主ということになりましょうが、あれはあれで家族を大切にしていたと思います。娘のことはとてもかわいがっていたし、あたしのことも、それはもう……ね。
さて、その娘ですが、どうやら彼氏が二人おるようです。本人が言うところによれば「彼氏ではない」そうですが。彼氏でない男を二人も連れ立ってるってなら、もっと問題な気がするけんどねえ。
次回は『騎士と喧嘩屋の闘』。あたしの経験から言わせてもらえば、娘も彼らも、もう少し落ち着いた暮らしをしてほしいものだけれど。
でもそれは、言わないの。