初期短編作品。コズミックファミリーロマンス。天体望遠鏡と高射砲って似てませんか?高いところにあって、空を見上げてて、衆目に晒されぬところにひっそり佇むイメージ……。そんな発想から生まれた作品。
睡屋《ねむりや》すばるはそこで台長を務める祖父と共に山の頂上にある「青木山天文台」で暮らしている。祖父の健康を気遣い何度も山を下りて暮らすことを提案する彼女だが、彼はあくまで自らの仕事を続けるつもりでいた。祖父が不在のある日、天文台を一人の男の子が訪れる。谷村ゆうたと名乗るその子は「お母さんに手紙を届けてくれる展望台に来た」と言う。不可解な彼の主張に彼女は意をくみ取って招き入れる。彼を天体望遠鏡のドームに案内しすばるが傍のレバーを下ろすと、望遠鏡はたちまち巨大な砲台に変形した。そう、青木山天文台の望遠鏡は、世界で唯一「天国に想いを届ける望遠鏡」だったのだ。そして、すばる自身にも想いを届けたい人がいた。