一風変わった住宅とそこに暮らす四人家族の生活を描いた読み切りマンガ。作中に登場する住宅の設計と、マンガの背景となる3DCGの作成を同時に試みた実験的作品。
郊外の戸建住宅に暮らす北条一家のお家は少し変わっている。建物の一部はアトリエになっていて、四人家族は全員がそれぞれ芸術に勤しむ生粋のアーティスト一家。姉のさくらは来たるコンテストに向けて作品の制作に取り組むが、ちょっとしたスランプの真っ最中で……。
北条家の破天荒な姉。高校に通いながら洋画を志している。人当たりの良い性格でアトリエの看板娘(?)として人気。
明るい色の前髪は生まれつきのもので、みんなからは「宝毛」と呼ばれて親しまれてるらしい。
北条家の苦労人の弟。立体作品の制作をするので紺のツナギを普段着にしている。家族の中で一番の常識人で、それ故に何かと割を食わされている。
北条家のマイペースな母。アトリエを使って様々な芸術ワークショップを開いており、地域の人々に好評。愛用の赤いエプロンは作品の制作から園芸、家事労働に至るまで酷使ぎみに使われている。
北条家の不思議な父。画業と何かのデザイナー業をやっていて、基本的に在宅かつフレックスなワークスタイル。へんてこりんなアトリエの主だが、いろいろと謎に包まれている。
『北条のアトリエ』はマンガの制作と作中に登場する建物のデザインを一体的に行った作品です。また、本編及びキービジュアルに使用された背景の一部については、3DCGで作成した建物モデルから直接生成を試みた、実験的な作品です。
ここでは作中に登場したさくらたちの自宅兼アトリエ、「北条のアトリエ」についてご紹介します。
北条のアトリエは郊外の旧市街地に建てられた住宅兼アトリエです。
四人家族(夫婦+子二人、すなわち北条ファミリーのことです)の住宅であり、同時に一家がアトリエとして利用しているスペースがあります。
南北に長い敷地で、前面道路に対して奥行が深い形状をしているのが特徴です。また、隣地には同じように住宅が並んでいますので、東西方向の採光条件は決して良いとは言えません。
建物はCLTパネル(木製の丈夫なパネルです)構法の二階建て、アトリエの延長空間として利用される広い中庭と、南北に分かれた棟を繋ぐ渡り廊下が屋外になっているのが特徴です。階段も渡り廊下と一緒に屋外に出されています。つまり、リビングから二階に上がるには一回外靴を履いて玄関を出なきゃいけないわけですね。
一階がアトリエとLDK、水回り。二階が主寝室と子供部屋が二部屋。簡単なテラスもついています。リビングと子供部屋が吹抜けを通してつながっているのも特徴です。
配置図・一階平面図
二階平面図
断面図(南北)
マンガ『北条のアトリエ』を執筆するにあたって、背景の一部には建物の3DCGを使用しました。その際、単に3DCGを白黒の画像に変換するのではなく、一定のプロセスを通じてマンガらしい「手描き感」のあるイラストに変換しました。
これがそのままの3DCGです。このままだとのっぺりしすぎていてマンガの背景とするにはちょっと味気ないですね。
そこで、このデータをもとに、まずは手描きのスケッチ感のある画像を生成します。ご覧の通り、陰影のつけ方や建物の輪郭線がフリーハンドで描いたみたいに少し「崩れている」のが分かります。
次にこの画像を加工して、スクリーントーンと呼ばれるマンガ特有の白黒表現に変換します。この時点でだいぶマンガの背景っぽくなりました。
あとは人の手で気になる部分に修正を加え、細部に小物を描き加えれば完成です。慣れれば一枚15分程度で完成します。同じクオリティの背景を手描きで描くとなると、すっごく大変なことです。
『北条のアトリエ』本編でもこのような手法を使って背景を描いています(一部は手描き)。また、キービジュアルの背景線画についても同様です。
背景にも注目しながら作品を読んでみてくださいね!