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セーブルと学ぶ 南極講座 第1回 作品入門

こんにちは。

このコーナーでは主人公サラエの相棒(彼氏?)のペットロボット「セーブル」と一緒に、本作の世界観を学んでいきましょう。

本編『南極のサラエ』の世界観は独自の設定にあふれ、関連する情報は今なお増え続けています。このコーナーではその中から選りすぐり、ストーリーを理解する上で手助けになる特に重要な情報をお伝えします。


初回となる今回は「作品入門」として、作品の舞台メガロニアとそれを取り巻く情勢について大まかな背景を学んでいきましょう。

こちらがセーブルです。しゃべることはありませんが、AIを搭載しているのでいつでもこちらの言葉に応えてくれますよ。「よろしくね」とあいさつをしているようです。


『南極のサラエ』(メガロニアシリーズ)の舞台は未来の南極大陸「メガロニア」です。これは私たちの生きる時代の南極大陸(英語でアンタークティカという)とは全く異なるものです。一目見て分かるように、氷に閉ざされておらず、未開の大地が広がっています。まずはその特徴と成り立ちをご紹介します。

2040年代、私たちになじみ深い氷に閉ざされた南極大陸は突然「蒸発」しました。理由は今でも分かっていません。数年のうちにすべての氷床が融解し、その下の陸塊は海面下へ沈没しました。文字通り「蒸発」したので、融けた氷床は大崩壊を起こして幾度となく大津波を発生させ、蒸発した水分は雨となって地表に降り注ぎ続け、すべてを押し流しました。世界中が壊滅的な被害を受け、海水面は世界平均で60m上昇しました。また、これも理由は分かっていませんが、同じ頃北半球の寒冷化が始まり、北半球に巨大な氷床ができています。

2040年の時点で世界の人口は約100億人でしたが、その後の数年間で40億人以上が災害や紛争、経済的・政治的な理由で難民になったと言われています。彼らのその後の運命が語られることはありませんが、参考までに、2080年時点での世界人口は約40億人です。

このような災厄に見舞われたことで世界のあり方も変わっていきます。多くの国家の運営が立ち行かなくなり、近隣諸国は自然と強力なリーダーシップを求めて連帯し始めます。彼らは「列強」と呼ばれるようになり、コロンビア、アメリカーナ、ヨーロッパ、ユーラシア、東亜、オセアニアの六列強体制が完成しました。今やすべての国や地域はこの六列強のいずれかに属するか、どれにも属さない三等国家(列強諸国から見た侮蔑的な呼び名です)のどちらかです。


そんな折、2048年のこと、新たな南極大陸が出現します。かつての南極大陸があった辺り、おおよそ南緯50度以南の海域に突如として巨大な一つの陸塊が隆起しました。この大陸は「メガロニア(メガロニカ大陸)」と名付けられました(「巨大な大地」という意味であり、探検家マゼランが南半球に存在すると唱えた伝説の大陸「メガラニカ」にちなんだ名称)。

こうして地球上に現れた「七番目の大陸」は旧大陸とはまったく異なる環境が広がっています。上空には衛星観測を妨げ、航空機を落とす電磁波を帯びた雲(南極雲)がかかり、周辺海域は大しけ、陸地は全周を標高2000mの垂直な岸壁に囲まれています。そして何よりも、南極には独自の生態系が広がっているのです。これらは体組織の構造から何もかも異なっており、それまでの地球には存在しなかった生物たちです。その最たる例は「怪獣」でしょう。怪獣は南極の原生生物のうち、人に危害を及ぼし得る危険な種を指します。今までに確認されたものでは体長が数百メートルに及ぶ例もあり、いかにこの大陸の生態系が特異かを物語っています。

突然現れた新大陸に、有用な資源が存在すると分かってくると開拓の機運が高まりました。ただし、この大陸は国際条約によってどこの国の領域にも属さないことが定められたので、世界は団結して「南極国際開拓機構(IDOM“アイダム”)」を設立し、南極の調査研究・開拓・入植者の統治・防衛を行うこととなりました。

大陸の数々の脅威に立ち向かい、果敢に地平を切り拓く彼らは「開拓者」として憧れの存在でした。

海に潮の流れがあるのと似たように、南極の大地の地表面は絶えず動き続けています(これを「大地のうねり」といいます)。そのため、南極ではふつう地面に定着する建築物を建てることはできません。その中でも、IDOMは限られた建設可能な地点を見つけ、特殊な工法を用いて南極に都市を建設してきました。このように南極では各所に点々と都市が存在しており、さながら大地という大洋に浮かぶ島々のようです。

大地が海のようならば、それを渡る「船」もあります。南極に存在する特有の物質「メガロナイト」の反発し合う性質(斥力)を利用して、人類は重力に逆らって物を浮かせる力を手に入れました。ここから地面を浮かんで航行する巨大な乗り物「陸上艦」が開発されました。元々は巨大な怪獣の突進を止め、人類の生存圏を守るために考案された兵器です。


さて、『南極のサラエ』の第一部は2080年の南極が舞台です。既に人類が南極開拓を始めて30年余り、開拓初期とは情勢が大きく異なっています。

まず、IDOMが開拓のすべてを管理する体制は終わりました。2063年(サラエが生まれた年です)に六列強が相次いでIDOMを脱退、国際条約を無視して独自の南極開拓をはじめたのです。これによって人員と資金の大半を失ったIDOMは衰退、今は日本やブリテン(かつての英国)などの三等国家だけが加盟している状態です。

今では六列強による熾烈な競争が南極開拓の力強い原動力になっています。陸上艦は各国が威信をかけて建造し、艦隊が組織されて運用も海軍に近いものになりました。彼らはお互いがライバルを出し抜こうとしつつ、一方では誰かが「一人勝ち」しないように相互に睨みを利かせています。

この時代の南極を語る上ではもう一つ、「南極国際アカデミー」の存在も重要です。アカデミーは南極に本拠地を置く国際学術組織です。IDOM体制の崩壊後、どの国にも属さない中立組織として誕生しました。世界中の優秀な人材を集めて南極の研究でトップを走り、その成果を人類の発展のために役立ててきました。また、軍務科があり軍事部門の研究を行うほか、それ自体がアカデミーの自衛組織でもあります。


今回の内容は以上になります。この基本的事項を理解しておけば本編を読み込む手助けになるでしょう。

セーブルもわかったかな?


「セーブルと学ぶ 南極講座」のコーナーは今後も随時更新していきます。

これからもよろしくね。