第22号
ワールドトレードセンター 《ツインタワー》

アメリカ合衆国、ニューヨークに位置した高層ビル。1973年竣工、地上110階建のビル部分の最高高さは417m。

ワールドトレードセンターは敷地内の複数の建築からなるが、その中核となるツインタワーはニューヨークで一番の高さを誇る。一辺63mの正方形である鋼製耐力壁と中央のコアで荷重を支える構造により、内部に柱はない。

ニューヨークのロウアー・マンハッタンに世界的な貿易センターを建設する計画は戦後から議論されていたが、経済的理由により頓挫していた。1960年代に入り、この計画がダウンタウン・ロウアー・マンハッタン協会とニューヨーク港湾公社により再始動、「ラジオ・ロウ」と呼ばれた電気街に巨大な貿易センターを建設することが決定された。設計は日系アメリカ人のミノル・ヤマサキ、数々の批判に晒されながら1970年に建設が始まったビルは1973年4月4日、正式にオープンした。

完成後、ツインタワーはニューヨークの新しいシンボルになった。一番の経済大国の一番の都市に立つ、一番高いビル。その堂々とした出で立ちは南タワー107階に位置する展望台の名の通り、「トップ・オブ・ザ・ワールド(世界の頂点)」であった。


2001年9月11日、アメリカ同時多発テロによってワールドトレードセンターは崩壊。突然の悲劇と共にアメリカの21世紀が幕を開けた。


オープニングエッセイ 雨宿りの小噺

今年も夏が来たんですね。

雨宿はオールウェイズどこかしらに体の不調を抱えておりますが、猛暑日になった途端それらすべてが快方に向かい始めました。どうなってんだ自分の身体。

きっと、自分は夏型人間なんだろうなあ。寒くて曇ってる時はあんまり調子でないし、そういうのって作業効率にも現れるんだよね。人間にも冬眠が必要なんじゃないの?

調子のいい日、上手くいかない日、あるよね。それと同じでツイてる週とツイてない週があってもいいし、元気な季節と元気じゃない季節があってもいい。それはそれで不調が長引くと困るけど。

もうすこしスローペースに生きられたらいいね。


今月のピックアップ 『お嬢店長おかしまし』第20話

お久しぶりの今月のピックアップです。過去に掲載した作品についてあれこれと作者が語る手前味噌なコーナーです。過去の一覧はこちらからどうぞ。

今回取り上げるのは第20号(2022年5月)掲載の『お嬢店長おかしまし』第20話。例によってお読みでない方は先に本編をどうぞ。


あらすじはざっと以下の通り。


結子たちが通う皇ヶ崎学院高等学校の現生徒会長、上達部兼盛(かんだちめかねもり)。彼は結子の才覚を見抜き、結子を生徒会役員にすべくちょっと強引な勧誘をしていました。勝秀の介入により事はますますややこしくなって……。生徒会室で兼盛は自らが尊敬する偉人、ベンジャミン・フランクリンについて語るのでした。


第14話でチラッと登場した生徒会長、上達部兼盛が満を持して登場です。……いや、しばらく登場させられずにゴメンね。だってさ、結子の学校での話ばっかりやってたら、

だがしや要素なくなるじゃん。

彼は熱血生徒会長!実家は有力な政治家先生の家系です。作中では描かれていませんが、家系図を辿ると明治維新の立役者に繋がるような、そんな由緒正しい家柄っぽいです。そういうわけで、スゴイお家ばかりの皇ヶ崎学院特進クラスの中でも生徒会長に相応しいのは彼を置いて他にいないのです。

結子のことは隣の学級ながら一目置いていて、なんといってもその人望が生徒会役員にうってつけだと考えているようです。


キャラクター情報は一旦おいといて、今回見ていただきたいのは第20話の最後のページです。

はいここ。「皇ヶ崎学院《ここ》はいびつよ。」ってどういうことだろう。確かに普通の学校とは変わっていますが……。てなわけで今回のテーマは皇ヶ崎学院という学校についてです。

そもそも皇ヶ崎学院ってどんな学校でしたっけ。

「私立皇ヶ崎学院高校。21世紀型アーバンスクールを目指し都原に創立した私立高校。(第1話より抜粋)」

「アーバンスクール」ってのは早い話が「都心部にあってビルの中に学校機能が入ってる高校」ってことです。皇ヶ崎学院はビル一棟が校舎で、例えば運動場なんかは屋上にあります。高層ビルが校舎になってるのは首都圏私立大学なんかじゃしばしば見かけますね。

そんな皇ヶ崎学院最大の特徴は一般の入試方式では入れない特進クラスが存在することです。各学年のB組とC組が特進クラスです。「なんでAとBじゃないの?」って話ですが、A組とB組にするとAの方がエラそうに見えるじゃないですか。序列としてのA,Bではないことを示すために敢えてA組は一般クラスになってるそうです。

一風変わった方式を採用している学校の内情は4,5ページで兼盛くんが語っています。

はい。特進クラスの学生はきっと一般クラスよりずっと多い授業料なり入学金なりを払っているものと思われます。その上生徒の保護者は各界の有力者……先生たちの中では「自分たちより生徒の方が立場が上」という共通認識がありそうです。

加えて一般クラスの生徒も彼らを別世界の人間だと考えている。

この学校が「いびつ」だというのは、この点にあります。


こうした状況に一番居づらさを感じているのは他でもない特進クラスの生徒自身でしょう。同じ高校生でありながら全く別物の扱われ方をして、同窓でありながら腰の引けた態度をされる……楽しいものではなさそう。自分がもっと「普通」だったら……なんてね。

そう考えてみると、結子の隠された顔を知った勝秀くんがわりあいすんなり理解を示したのも頷けるのではないでしょうか。


ところで、第20話のラストシーンではもう一つの話題も示されていましたね。これは作品の根幹に関わる、雨宿が「神之目結子」という人物に対して常々思っていることの一つでもあります。

その話は追々。


今回のお話はこれくらいにしておきましょう。中辻高校の面々と対照的なもう一つの仲間たち。未来の社会を担うことを運命づけられた彼らの活躍にも目が離せません。

次回のピックアップは何にしましょうね。ていうかあれこれ語る前に本編の続きを書きなさいよ。


前回までの『鐵軌の帝國』

「……あなたがそこにいることは分かってますよ。『続きが読みたい』そんな風な顔をしていることもね。ならばここでわたくしの話を聞こうが聞くまいが大した違いじゃありません。」

「アリゾナで研究を終えたロバート技士を待っていたのはバッシングの嵐でした。神聖な術を貶める研究、さらにはそれを使えなくしてしまうと言うのだから、社会の動揺は並大抵のものじゃありませんでした。」

「部屋に引きこもっていた技士を刺客が襲いました。今や一介の技士は命すら追われる存在。そんな彼を助け出したのはかつての仲間たち。これからの行く末に思い悩むうち、彼はある手紙を手にします。そこに書かれていたのは『ニューヨークに来れば君の研究成果だけは保護できる』という何者かからの達し。如何にも怪しい便りですが、彼は一縷の望みを託してニューヨークに向かうのでした。」

「道中で襲撃を受けながらも西部の荒野を渡り切った四人はロッキイの麓、ソルトレイクシティで夜を明かします。まだまだニューヨークへの道のりは長い、そのレイルの先に一体何があるというのでしょう。」

「さて、これより後の内容は読まなくてもよろしいですよ。……わざわざこう言ってもあなたは読むでしょうがね。おおかた、目の前の白髪頭が何者かということの示唆を得たいのでしょう。」

「……」

「何も言わなかったからって肩を落とさないでください。」

「……」

「ところであなた、アメリカの地図は頭に入っていますか?それは勿論、アメリカ人だって覚えてはいないでしょうけど。わたくしだって鮮明に覚えているのはミシシッピのほとりにある小さな街くらい……幼い少年にはそれで十分だったのです。」

「またお会いしましょう、あなたはお忙しいようですから。」


連載作品・記事


お知らせ

読者アンケートの仕様変更

読者アンケートに関して少々の仕様変更をアナウンスします。

第3回読者アンケートは2022年7月3日より実施する予定でしたが、回答者プレゼントの壁紙イラストを用意できておりません。アンケートそのものは継続的に開設しておりますが、壁紙イラストの配布が行っておりませんのでご了承ください。

と言っても、そもそも回答者がいらっしゃらないんですけどね……。

本Webサイトの今後のためにもどうぞよろしくお願い申し上げます……!!

予告
予告

――行こう。


『鐵軌の帝國』最終章、来月号掲載!!


第22号

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次回もお楽しみに!