第19号
ボストン茶会事件(Boston Tea Party)

1773年12月16日、マサチューセッツ州ボストンの港で積み荷の茶箱が海に投げ捨てられた事件。アメリカ独立革命を象徴する事件の一つ。

英国は植民地に対する課税を強化し、アメリカの市民はこれに強く反発した。あらゆる品目に課税を行ったタウンゼンド諸法は激しい反対によって撤廃されたが、依然として茶への課税は続いていた。

イギリス東インド会社がアメリカにおける茶販売の独占を目論んだ時、市民の怒りは爆発した。アメリカ先住民のモホーク族に扮した住人が「ボストン港をティーポットにする」と叫び、ボストン港に停泊する東インド会社の貨物船に乗り込んで積み荷の茶箱を海に投げ捨てた。これ以降、英国とアメリカ植民地の関係は急速に悪化し、アメリカは独立への道を辿る。


ちなみに呼び名の「Tea Party(茶会)」は事件を目にした人々の皮肉。日本人がヒートアップしてきた時に「祭り」と呼びたがるのと似ているから、言うなれば「ボストンお茶投げ捨て祭り」くらいのニュアンス。


オープニングエッセイ 雨宿りの小噺

新年度、スタートです。

雨宿拾遺物語も新連載でスタートダッシュを切ります。

実を言うと本作の連載然り、今月号の準備然り、結構ギリギリなスケジュールを送っていまして……なんとか間に合わせられた次第です。

だけど、こんなに緊張感を持って新年度を迎えたのは2年ぶりくらいかもしれません。これはこれで悪くない。

とはいえ、更新直前の直前にこれを書いてるのはギリギリが過ぎますね……。

「ギリギリ」は用法・用量を守りましょう。


連載開始記念!「鐵軌の帝國」をもっと楽しむコツ

こんにちは。このWebサイトを運営している雨宿拾遺と申します。

いや~始まりましたね!雨宿拾遺物語最新作の絵草子「鐵軌の帝國」!

「絵草子」って何ですかって人、簡単に言えば「ちょいちょいマンガや挿絵が挟まる小説」です。

書いてるこっちは大方原稿書き上がってるので「あー、終わっちゃったなあ……」という気分ですが、みなさんはこれから楽しめるんだから羨ましい限りですホント。

せっかくの新連載なので読んでほしい!盛り上がってほしい!ということで、今回は作品をより深く楽しむためのコツをお話しします!

読む前にこれをやっておくことで、もっと楽しめちゃうこと間違いナシ!


それでは今日もやや空回りしたテンションでいってみましょう!


「鐵軌の帝國」てどんな作品?

この度連載が始まった絵草子「鐵軌の帝國」。19世紀末のアメリカ合衆国の社会を下地にしたファンタジー作品です。

あらすじはこちら。

1885年、アメリカ合衆国。術士と平民の権利を巡り全土が戦火に呑まれたシヴィル・ウォーから20年、災禍を乗り越えた合衆国は世界一の大国として栄華を極める「黄金時代」が到来する。カリフォルニア州、サクラメントの若き電信技士が引き受けた任務を通じて様々な道が交わっていく。

蒸気機関車に勇気と冒険を乗せ、合衆国を駆け巡るクラシカル・アメリカン・ファンタジー。


キャッチコピーに「ファンタジー」と銘打つものの、どちらかというとリアル寄りのファンタジーです。なので作品世界の歴史も史実の歴史とほぼ同じ、舞台となる世界観も史実の19世紀末アメリカとだいたい同じです。

『海底二万里』ジュール・ヴェルヌの世界とか、宮崎駿作品、『サクラ大戦』シリーズとか、スチームパンクな世界観をイメージしてると拍子抜けするかもしれないのであしからず……。

そのため、作品を読む上では当時のアメリカ合衆国という国について多少理解があるともっと楽しむことができます。そこで今回は簡単な3ステップで作品を深く味わうためのポイントをご紹介!


STEP1 蒸気機関車を見てみよう!

本作を語る上で欠かせない要素は、題名にも入っている鉄道!作中で度々登場する列車での移動シーンをより鮮明にイメージできるよう、蒸気機関車について知っておきましょう。

「蒸気機関車(SL)」と聞けば松本零士の『銀河鉄道999』とか、宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』が思い浮かぶでしょう。でも実際SLってどんな見た目でどんな風に動き、どんな音がするんでしょう?ホントに「シュッシュッポッポ」ていうのかな?

現在、日本ではSLの動態保存をしている鉄道事業者が多数存在し、YouTubeなどで調べるとそれらの運行する様子を捉えた動画がたくさんあります。これらをご覧になって今一度蒸気の息吹を感じてみては?

ところがちょっと注意点。これらの動態保存されているSLは国鉄が昭和初期に製造した車両がほとんどです。なので『鐵軌の帝國』に登場する19世紀末アメリカのSLはもう少し違っています。どこかでこの時代のSLを見られないだろうか……。

見られます。

東京ディズニーランドにあるウエスタンリバー鉄道です。

ファンの間では「西川鉄道」などと呼ばれているこのアトラクション、西部開拓時代のアメリカをテーマにした世界観で、お客さんを乗せる機関車は1871年製のアメリカのSLをモデルにしています。実物より少し小さいミニチュアですが、雰囲気はピッタリ!

アトラクションだからって侮るなかれ、これも灯油を燃料にした本物のSLです。

今すぐTDLに行け、とは言わないので、公式サイトを覗くだけでもいいので調べてみてください。


※実は、多くの人のイメージに反して『銀河鉄道の夜』に出てくる「銀河鉄道」の機関車はSLではありません。作中にしっかりとそう書いてあるにも関わらず、なぜか多くのイラストではSLで描かれがち。


STEP2 「金ぴか時代」って何だろう?

本作の舞台は1885年、栄華を極める「黄金時代」のアメリカ。

実際に、アメリカ合衆国のこの時代を「金ぴか時代(Gilded Age)」「金メッキ時代」と呼ぶことがあります。『金ぴか時代』はかの有名な小説家マーク・トウェインの作品の題名をもとにした呼び名です。

産業が栄え、無限の富が生み出される黄金のような華やかさの中で、その金メッキを一枚向けば不正や社会格差が浮き彫りになる光と影の時代。この時代を知るのに最も手っ取り早い教材は……Wikipediaですね。

資料としてWikipediaを紹介するなんてテキトーな……でも手軽さには勝てない。

日本語版の記事「金ぴか時代」は内容が少ないので、英語版の「Gilded Age」を参照してください。Google ChromeなどにはWebページの翻訳機能がついてますから、英語が読めない人でも大丈夫。文明の利器を最大限活用してください。

この記事では当時の写真や絵画なども多数掲載していますので、雰囲気を味わうことができます。勇ましいロマンに溢れているわけでもなく、悪いことばかりの暗い時代でもない、この複雑な時代をよく知ることができます。


STEP3 西部劇を見よう!

西部劇、それは男のロマン。

西部劇は19世紀後半の西部開拓時代を舞台にした映画作品のこと。ハリウッドで1930年代から1970年代くらいまで作られた作品のジャンル。よくあるイメージは……荒野、ガンマン、馬、酒場。男の子なら大好きなカッチョイイ映画です。

年代的には本作より少し昔、しかも西部の開拓地に限ったお話ですが、当時のライフスタイルを学ぶにはいい作品群ですから、一度ご覧になってはいかがでしょう。しかも楽しい。何だったら僕の作品より楽しい。(そんなこと言わないで!)

「西部劇の神様」と言われる有名な監督はジョン・フォード。このジャンルを開拓し、多数の傑作を残しています。『駅馬車』『荒野の決闘』『黄色いリボン』とかね。

実在の人物をモデルにした二人の悪党の冒険活劇、『明日に向かって撃て!』は終始明るい雰囲気で描かれる楽しい作品。「西部劇」という世界に一つの終わりを与えた作品でもあります。

セシル・B・デミル監督の『大平原』は大陸横断鉄道を題材にした鉄道もいっぱい登場する作品。

かの有名な『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズを知ってるなら『バック・トゥ・ザ・フューチャー Part3』はれっきとした西部劇です。この作品は西部劇というジャンルが廃れてから作られたいわば「西部劇へのラブコール」。『鐵軌の帝國』とも似たものを感じます。しかもタイムスリップする作中年代は1885年!これも同じ!


あと、全く関係ないですけど荒木飛呂彦のマンガ『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズの第七部『スティールボールラン』は1890年のアメリカ合衆国横断レースを描いた作品。本シリーズを読んだことない人に最初に第七部をオススメするの違う気がしないでもないけど、面白いよ。


ほぼほぼ僕の好きな作品紹介になりましたが、ぜひご覧になってくださいね。昔はTSUTAYAを回って旧作コーナーを漁る必要がありましたが、今はおうちでいくらでも見る方法がありますから。僕とて本作を執筆するにあたって資料集めのために見るまでは一度も見たこと無かったけど、すっかりハマりました。


さて、舞台挨拶じみた導入はこれくらいにしておきましょう。上記の3ステップをやってもやらなくても、本作は読んでください(マジでお願い)。

連載に合わせて様々なコンテンツも盛り込んでいく予定。全五章、五か月に渡る冒険におつき合いのほどよろしくお願い申し上げます。

では、アメリカの大地でまたお会いしましょう。


連載作品・記事


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第19号

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