第12号

オープニングエッセイ 雨宿りの小噺

第12号です。12ということはつまり……?年が一周したということです。もうそんなに経つんですね。このことについては来月の一周年記念号に譲るとしましょう。

わがままで粗雑な食生活を続けていると、どうしても「しばらく食べてないもの」がでてきます。元々そんなに好きじゃなかったり、意図せず避けていたりするんですが、ただ単に「食べる機会に恵まれなかったもの」もあったりします。

僕においてはそれはハンバーガーでした。年単位で食べてなかった、こう聞くと「雨宿はジャンクフードを食べない健康的な人だ」と思われるかもしれませんが、逆です。わざわざ食べに出かけるってこともない、無頓着なだけです。

ハンバーガーたるもの、久しぶりに食べたらそりゃあもう美味しいでしょうね!僕もそう思ってたんです、ところが。

「……なんか、思ったより美味くねえな?」

軽くショックでした。しばらく食べないでいるうちに「ハンバーガーは美味しいもの」という魔法が解けてしまったようでした。ファストフード店関係者の方がご覧になっていたらすみません。ハンバーガーが悪いんじゃないです、僕の舌が変わってただけです。

もちろん、久しぶりに食べるとちょー美味いってものもありますよ?桃とかね。むしろその方が多いでしょう。


これって、食べ物に限った話ではないのかなあ。

これを聞いて「好きを実感するためにたまには距離を置くのも大事だな」と考えるか、「好きを好きでいるためにはいつでも触れていなきゃダメだな」と考えるかはみなさんにお任せしましょう。


連載作品・記事


今月のピックアップ 輝け!ポニテ学園!

突然ですがみなさん!女の子の髪型で好きなのは何ですか!?

残念ながら答えは求めてません!

そんな僕が好きなのは、そう、ポニーテールです!

知らないとは言わせませんよ、作者についてのページにちゃんと書いてありますからね。


そんな雨宿拾遺のポニテ愛だけで描かれた狂気の作品があります。

『輝け!ポニテ学園!』です。

今月のピックアップはこんな奇書が如何にして誕生してしまったのか、それを探っていきます。

いつものごとく、ネタバレマシマシでいきます。元の作品は短い読みきりなので、先に読んでおいてね。


あらすじ

この春、馬尾学園に入学した音羽は「髪型を一つ結びからポニテに変えたらかわいかった」だけの理由で「ポニーテール部」に強制入部させられてしまう。そこにいたのはポニテを愛し、研究し、布教するポニテ乙女たち。彼女らは年に一度開催される「天下一ポニテ会」で優勝をつかむため音羽をスカウトしたのだ。そんなわけで天下一ポニテ会に出場させられた音羽、そこではお互いのポニテを使って血で血を洗う残酷な戦いが繰り広げられていたのだった――――。


ちなみにジャンルは「青春学園マンガ」。「青春」と書いて「ポニーテール」、「学園」と書いて「パラダイス」と読みます。

何言ってんの?


雨宿拾遺初期短編作品として

本作品はWebサイト「雨宿拾遺物語」開設時から公開しているもので、毎月発行しているWebフリーマガジン「雨宿拾遺物語」には掲載されたことがありません。同じような作品に『睡れよすばる』、『鼓動の価値を』があり、これらを雨宿拾遺初期短編作品と総称しています。僕が活動を始めるにあたって練習的に書いてみた作品群です。その中で製作時期が最も古いのが本作、高校生の頃に書いたものですね。現在の作風が確立する前で、今見ると粗が多いですね。それも味。

『ポニ学』を描く上でコンセプトとしてあったのが「ポニテ」と「ギャグ」。僕には逆立ちしても書けないジャンルが二つあります。それは「少女マンガ」と「ギャグマンガ」、前者はさらさら描く気もありませんが、後者は隙あらば描いてみたいと思うことがあります。連載はキツいけど読みきりならいけるだろうってことで生まれたのが『ポニ学』だったんですね。ですから本作の目的は「ポニテを描く」よりも「ギャグを書く」ことにあったと言えるかもしれません。少しでも面白いと思っていただけたら嬉しいです。

まあ……これが完成してウキウキで友人に見せに行ったら、ものすごーく微妙な顔されましたけどね。

その節はどうもすみませんでした。


ポニーテールを描くこと

『ポニ学』のテーマは言うまでもなく「ポニーテール」です。これは女の子の髪型の一つで、もはや詳しい説明は不要でしょう。作中では正当なポニーテールとは何か、という話までしています。

ここで僕個人が考えるポニテの魅力について語ることはできますが、それじゃあただの性癖暴露大会だし、本気で話したら長すぎてみんな寝ちゃう。ここではイラストとしてポニーテールを描くことについて少々お話ししましょう。

ポニテと一口に申しましても様々な派生形がありまして、それは作中でご紹介の通りです。本来、大抵のポニテというものは真正面からだと見えないのですが、イラストで描くときには真正面からも結び目が見える高めのポニテが好まれるようですね。

イラストの世界におけるポニテの良さといえば「描きやすく、かつ動きの表現がしやすい」ことにあるでしょうね。毛束が一本にまとめられたポニテは非常に描きやすい上、髪が垂れ下がっているので自由に振ってイラストに動きを持たせることができると言えましょう。

加えて僕はキャラクターの感情表現にも使います。「ポニーテール」とは「仔馬のしっぽ」、動物は感情に合わせてしっぽが豊かに動きますね。それに似せてポニテをあっちこっち振り回します。キャラクターが嬉しい時に揺れたり、びっくりした時に逆立ったり、怒った時にギザギザしたりするシーンが僕の作品から見受けられるはずです。こうした「ポニテを使った感情表現」の基礎は『ポニ学』の時点で既に築かれていたようです。


僕の連載作には必ずポニテキャラが出てきますね。『ポニ学』の頃から愛が変わっていない証拠でしょう。

ところで、「俺の嫁」こと結子店長はポニテじゃありませんね?これはこれで理由があるんですけどね。


主人公について

『ポニ学』の主人公は華の高校一年生、「音羽」。流れでポニーテール部に強制入部させられてしまいます。

……音羽?音羽といえば連載作『まがたび』のヒロイン、遊真のクラスメートと同じ名前(最近はすっかりその座を真子に取られた不遇なヒロインです)。『まがたび』の音羽は中学三年生、てことは来年こんな目に遭うのでしょうか?これはどういうこと?

結論から言うと、いわゆる「スターシステム」ですよね。かの手塚治虫先生が使っていらっしゃった手法ですね。「別作品で同じデザインのキャラクターを使用する、でも二人は全くの別人」というもの。『ポニ学』の主人公と『まがたび』のヒロインは別人です。

これにはちょっとした事情がありまして。

そもそも、作品が描かれた順番は『ポニ学』が先ですが、その頃には『まがたび』のプロットは書き上がっていたので、「音羽」というキャラクターの初出は『まがたび』です。『ポニ学』を描く上でキャラを拝借してきた形です。

「ポニテセーラー服」というジャンルは超王道です。『ポニ学』内でもこのことが記述されています。ポニーテール自体が若い女の子に人気の髪型なんですから、ポニーテールで学生服を着ているというのはおかしくない姿なわけ。僕はもう言うまでもなく大好きですね。「ポニテセーラー服の女の子を描きたい」という願いはかなり昔から持っていました。

ここまでの話を順番にまとめるとこうなります。

「ポニテセーラー服の女の子」を描きたいという願望→『まがたび』の「音羽」の誕生→『ポニ学』を描くにあたってヒロインを拝借

「ポニテセーラー服の女の子」という心の拠り所が『まがたび』『ポニ学』二つの作品でそれぞれ具現化したということですね。


その割には『まがたび』本編に音羽出てこねえじゃねえか。

……僕はいつも彼女にごめんなさいしながら作品を描いてます。

でも!でも!普段描けない分作品ポスターにはあれだけデカく描いてあげたじゃないですか!

そんな彼女の出番はもうすぐ来ます。もうすぐ!……ホントに!


続編の展望……?

ここまで見てきた『ポニ学』ですが、続編を描きたい欲があります。僕がポニテ好きの紳士である限り、もっと描きたい。久しぶりにギャグに振り切ってみたいし、あと単純に「ポニーテール部」のキャラがいいので活躍させてあげたいですね。

ちゃあんと書く内容はあるんですよ。それもとびきり。

そうでなくても、ちょくちょく読み切りや短編は出していきたいなあ。未だ公開してない作品もありますし。

何よりポニテは素晴らしいし!


といったところで今月のピックアップはここまで。最後はこの言葉で締めましょう。


ポニテフォーエバー!


お知らせ


『お嬢おか』の作品ページをリニューアルしました!

この度『お嬢おか』の作品ページを改装しました。将来的な話数の増加に備えてページにタブを追加し、新たに「登場人物」ページも追加!用意ができ次第、他の作品ページもこのデザインに改める予定です。

オープン一周年、今後も進化し続ける雨宿拾遺物語をよろしくね!


裏表紙

みなさまからのお便りお待ちしております。お便りはこちらから。

次回もお楽しみに!