第42号

オープニングエッセイ 雨宿りの小噺

3月、年度末ですね。

雨宿にとって来年度は環境が大きく変わるのでとても重要な時期です。というのも、大学を卒業します。

このWebサイトが開設されたのが2020年10月、つまり雨宿拾遺は大学一年生の年に始めたわけです。それから三年以上経って、僕もついに卒業です。去年辺りからSNSの投稿が激減したりしてひょっとするとご心配おかけしていたかもしれませんが、まあこういったわけもあったんです。

実生活の環境は変わりますが、でもご安心を。このWebサイトの活動はこれまで通り続けていきます。


というわけで、先月辺りから様々な人に別れを告げる機会が増えました。「いつかまた会おうね~」なんて言って別れますが、実際はというと、手を振って別れたすぐ後には心も身体も新しい方向にむかって前だけ見据えている感じがします。

「さよならだけが人生だ」というのは井伏鱒二の有名な訳ですが、まさしくそんな感じ。とはいえ、ですよ。すっかり忘れてしまうのかと言われればそうではない。たまに思い出したりもするし、案外すぐに会う機会が訪れたりも。それでいいと思うのです。

前だけを向くのが人生ではない、よね。


『テラレジア・クロニコ』第6章予告

みなさまこんにちは。大統領秘書のロディヤ・ハイルモンドです。

こちらは好評連載中『テラレジア・クロニコ』あらすじ紹介です。


このあいさつももう8回目なんですわね。「いまさら言わなくても分かるわよ」って思ってるでしょうけれど、定型文のあいさつは80年代アイドルからの定番ですものね。これだけしつこく言えばあたくしがテラレジアの大統領秘書だってことも分かってもらえるわよね?ウソじゃないのよ?


ストーリーもついに佳境、今月からは第6章が始まりますわ。物語はますますワケワカメであたしもお手上げなんですけれど、ご安心を。これからもっとワケが分からなくなるそうよ。

すべての真実が明らかになった時、そこにはどんな世界が広がっているのかしら。


第6章のキービジュアルはこちら。

あたくしの先生、大統領ですわね。……あれ?これって今月号(雨宿拾遺物語第42号)の表紙と同じじゃない?……いいえ、でもどこか違ってるような……。見比べてみてね。

というよりも、あたしとしては主役の二人がすっかりキービジュアルに出てこなくなっちゃったことの方がショッキングよ。あたしのアーク様とフェルド様を返して!

……ま、まあいいわ。あらすじを見ていきましょう。


物語はバルザン・メフィストを首魁とする軍事クーデター事件のあと。

カノンの勤めるテラレジオ・ポスト分社に、本社から通達がありました。記者を一名本社に引き抜きたいという話で、おハゲの編集長はなんとカノンを推薦しようと思っているというのです。本社に転勤といえば、大変名誉なことで夢のような話です。けれども、もしカノンが本社に異動したら、アーク様とフェルド様の活躍を記した「テラレジア・クロニコ」を執筆する者はいなくなってしまいます。結局、カノンは返事を待ってもらうことにしました。

二人に相談しようと三階の部屋を訪ねたカノン、そこにいたのは真っ白なキャンバスを前にぼんやりと座り込んでいるアーク様だけ。軍事クーデターの一件以来、黙って考え込んでいる時間が多くなったアーク様、いつもみたいな覇気が無くて心配ですわね。

相棒のそんな姿に煮え切らない思いを抱えるフェルド様は、彼を「腑抜けた」と言って知らんぷり。二人とも、どうしちゃったのかしら。

あてもなく街をぶらつくフェルド様の前に、一人の女性が現れるのでした……。

え!?

これあたしじゃない!?


……なーんて、とぼけてみても無駄ね。

そうなの。ついさっきお呼び出しがかかっちゃって。正直なことを言うとね、あたしもあんまり気乗りしないんだけど、こればっかりは仕方ないわね、仕事なんだから。


というわけで、もうそろそろ行かないと。もう少しおしゃべりしていたかったけど、また今度ね。


『テラレジア・クロニコ』は2024年4月に完結予定。あたくしの作品紹介も残すところあと一回……かしら?慣れない仕事で拙いところも多かったでしょうけど、こっちとしては楽しかったわ。みなさまが応援してくれたら、またお仕事をもらえたりもするのかしら……ウフ。


なにはともあれ、アーク様とフェルド様の冒険を最後までよろしくお願いします。


連載作品・記事


お知らせ

『お嬢おか』中編予告!

大好評連載中の『お嬢おか』は来月から中編がスタート!その名も……

お嬢店長おかしまし Film de Nakatsuji

「フィルム・ド・中辻」、「中辻の映画」という意味。結子店長たちが映画制作に挑戦します。

あらすじ

中辻高校文化祭の特別企画として、市内を舞台にした映画制作をすることになった政直たち映画研究部。部長の政直が監督となり、結子を主演女優に抜擢、高校の生徒や街の人々を巻き込んで、たくさんの思いを載せた一大プロジェクトが始動する。限られた制作期間、制作陣はまったくの未経験、果たして感動の嵐を呼び起こす映画は作れるのか――。アカデミックだがしや日常コメディ、波乱の映画制作編!


中編は2024年4月より、全5回の連載予定。お楽しみに!


第42号

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