第39号

オープニングエッセイ 雨宿りの小噺

風が冷たい季節です。

僕は風が強めなところに住んでいて、毎日自転車に乗る生活をしておりますので、この季節はかなりつらいです。

それと同時に、北風に吹き付けられている時って、「生きてる」って感じがします。

「風に逆らって立ってるぞ、自分。」

みたいな。

向かい風に逆らうだけが人生ではありませんから、時には流されるまま身を任せることも必要です。だからといって、まるっきり強風に立ち向かわないのでは味わいがないでしょう。


……くれぐれも風邪はひかないようにご自愛ください。


『テラレジア・クロニコ』第3章予告

みなさまこんにちは。大統領秘書のロディヤ・ハイルモンドです。

こちらは好評連載中『テラレジア・クロニコ』あらすじ紹介です。


先月の第2章はお楽しみいただけたかしら?

いよいよもって作品の謎は深まるばかり。アーク&フェルドが直面している現実はどうなっているのか?「大統領」って何者なのかしら?

……あたし?あたしは大統領秘書のロディヤですわ。何度もそう言ってるじゃないの、ウフ。


このコーナーも第五回を迎え、みなさまにも馴染んでいただけたかと思います。今回は第3章の予告よ。まずはキービジュアルからどうぞ。

今度の舞台はテラレジア清教の大聖堂!そして本作のもう一人のヒロイン、エリセアが満を持して登場ですのよ。……1-1でちらっと出てた以来の出番ですわね。


さっそくあらすじ紹介……と行きたいところなんですけれど、その前に、本章のストーリーにおける重要な要素、「テラレジア清教(せいきょう)」という信仰について軽くお話ししておく必要がありますわね。

「テラレジア清教」はテラレジア人の圧倒的多数が信仰する宗教で、王国時代の国教でもあったものです。王国成立と同時期に創始されて、王国が版図を広げるのと共に大衆に広まっていったんですの。

あ、そうだ、日本語で「清教」と表記していますけれど、イギリスのプロテスタント宗派「清教徒(ピューリタン)」とは何の関係もありませんからあしからず。テラレジア語の訳語として相応しい言葉がなかったから新しく作った造語なのよ。そもそもテラレジア清教は、厳格に神の教えを説いた「宗教」というよりも、人々の日常生活や価値観と結びついた「慣習」に近いもので、その立ち位置は日本人の寺社仏閣に対する信仰に近いものと言われており、それ故に「聖教」の字をあてるには不適当と考えた学者が今の訳語を作り……

なんて、どうでもいいわよ。知りたい人だけ専門書を手に取ってみてね。


とにかく、テラレジア人のほとんどすべては「テラレジア清教」ってのを信仰してて、それはこの国独自の宗教です!ハイ、終わり!


そして第3章の戦いこそまさしく、テラレジア清教の総本山たる大聖堂で繰り広げられるんですの。


さて、あらすじ紹介と参りましょう。

お話はアーク様たちが列車に乗っているところから始まります。彼らが向かっているのは北西部のバロン県と呼ばれるところです。

そのきっかけはお二人のもとに届いた一枚のハガキ。差出人は不明で、表に描かれていたのはカミツレ、またの名をカモミールというお花の絵だけでした。これだけじゃあ愛のお手紙にしては少々弱いですわね。ところがそこは流石のアーク様、カモミールの絵からすぐにテラレジア・クロニコの一節を思い出したんですの。……「テラレジア・クロニコ」というのは、王国時代に書かれた年代記のことですわ。

かつて、キリスト教徒によるイベリア半島のレコンキスタのあおりを受けて、テラレジア辺境の人々はキリスト教徒、イスラームの双方から迫害を受けておりました。この窮状を訴えるため、とある少女がテラレジア王にカモミールの花を贈ったそうなんです。読み書きのできない少女から贈られた花を受け取った王はすべての思いを理解し、ただちに兵を挙げて異教徒から人々を救った――という逸話があるんですって。

カモミールはテラレジア全土で見られる代表的な植物、それが異教徒の侵入者によって踏み散らされている……お花にはそういう意味が込められていたんだとか。歴史書の真偽はさておき、素敵なお話ですわね。


今再び、王に贈られたカモミールの花。アーク様は誰かが自分に助けを求めていると確信し、ハガキの消印をもとにバロン市に向かったのです。

バロン市といえばテラレジア清教の総本山たるバロン大聖堂があります。かねてより地元民に神聖視されていた巨大な岩山の上に、大聖堂をまるごと一つ作ってしまったという、なんとも大胆で壮麗なスポットですのよ。

そこで出会う新たな敵、味方……。アーク&フェルドの運命やいかに……?


お楽しみに。


ところで、テラレジア清教はテラレジア王と密接に結びついたものでもあるんですわよ。清教は王を「唯一の預言者」として讃え、王は清教を保護し教会の建立に資金を提供してきたんですの。清教の開祖は歴史の記述が少なく、今なお多くが謎に包まれた存在ですけれど、どうやら王国の初代国王と親しい人物だったそうよ。初代国王が各地を征服し、開祖が教えを広める、そうやって一代で国の基礎を固めたんですの。なかなかいいコンビじゃない?まるでアーク様とフェルド様みたいね。


『テラレジア・クロニコ』は毎週日曜日更新。合わせて公式設定集『テラレジアの歩き方』もよろしくですわ。


みなさまは神様って信じてます?……ごめんなさいね、突然。というのも、あたしってあんまり信じてないのよね。天に向かって手を合わせるのって時間のムダじゃない?そうする暇があったら自分自身で現状を変える努力をするべきなのよ。だって世の中の何事も、ひとえに人の知恵が為せる業でしょう?

あたしって意外と単純?ううん、ホント言うと、神様なんていないでほしいのよね。だってあたしはその類の人(?)たちには許されないような仕事をしてるから。

……あ、秘書のことを言ってるんじゃないの、ウフ。


それじゃあまた来月会いましょうね。よいお年を!


連載作品・記事


お知らせ

『お嬢おか』第2話、第3話リメイク

どうも、作品紹介を大統領秘書様に奪われ、この頃はちっとも顔を出さない雨宿です。

この度、『お嬢おか』の第2話、第3話をリメイクしました。

思えばこの頃の原稿は2020年の夏ごろ、本Webサイトが開設される前に描いていたもので、画風も今とはだいぶ違ってましたね。特に結子店長なんかまるで別人です。なので「今の絵柄で描き直そう」と思い立ったのが今年(2023年)の夏ごろ、本当なら10月の雨宿拾遺物語3rdアニバーサリーでババンと公開したかったのですが、いろいろやっていたら作業が遅々として進まず、結局今できている第2話と第3話だけ公開というていたらくです。

「『お嬢おか』序章」とも言える内容は第10話までで(ちょうど単行本一巻分のページ数)、とりあえずここまではリメイクしたいと思っているのですが、まあこればっかりやってると某国の国王陛下に怒られますので、ゆっくり進めて参ります。

新しくなった第2話第3話はこちらからご覧ください。


↓結子の初めてのお客様で、今ではみんなの妹キャラ、琴美ちゃん。

↓政直初登場。政直と琴美が兄妹だと明かされたのは第11話になってからです。


第39号

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次回もお楽しみに!