いつだったか水平線に沈んでいく夕日をずっと眺めていたことがあります。
海の上ってのは大抵雲がかかっているので、水平線ピッタリに沈んでいくのを拝むのはレアなんですが、その時も厳密には雲に隠れていく夕日だったような。
沈むのにかかるのは正味20分とかだったっけ、結構早いんですよね。
そこで思ったのは「見えなくなった太陽は向こうで何をやってるんだろう」ってこと。
そりゃもちろん地球の反対側を照らしてるわけで、そもそも太陽は生き物じゃないので何かをするもしないもあったものじゃないんだけどさ。次の日の朝にはしれっと顔を合わせる相手なのに、ゆうべは何をしていたのかって、知ることはないんだなあって。そんなことをなぜか夕日を見ていた時に思ってしまったんですよね。
もしかしたら太陽も同じことを考えてるかもしれませんね。「あいつは自分が見てない間に何をしてるんだ」って。
ここのところ、太陽さんに隠れてコソコソやっていることの方が多いような……。
今月号は特集する内容がないので、雑談します。ただのブログみたいなものですね。
4月号より連載予定の「お嬢おか」中編については、来月号でご紹介する予定です。
子供の頃、国語の時間に「本の推薦文を書こう」みたいな課題をやりませんでしたか?
あれって、うまく書けました?
雨宿の場合はというと、平凡に作品のあらすじを書いて、物語の山場とも言えるイチオシのシーンを紹介して終わった気がします。教科書に書いてあった例文がそのような構成だったので、授業課題としてはそれで正解だったんだと思います。
でもそれって、本当に作品の「好き」を説明できたんでしょうか?
例えば大好きな作品が一つあったとして、それを目の前の友人に紹介するとします。
物語の概要を伝えた上で、盛り上がるシーンを説明することはできると思う。推しのキャラクターについて話すこともできると思う。評論家よろしく作品を分析して、どこが独創的で興味深いかを伝えることはできると思う。
だけどそのどれを話したところで、自らが作品に対して抱く「好き」の感情を表現しきれたとは思わないんですよね。
極めて個人的な「好き」という感情を言葉にするのって、想像以上に難しいことかも?
ついこの間、お友達に好きなマンガを布教したんです。敢えてタイトルを伏せるのは、このお話を一般論として伝えたいからです。ここで作品名を出してしまうと「『○○(作品)』の面白さを説明するのは難しいって話」になっちゃうからね。
しばらく単行本を貸してやって、返す段になった時に、少し話したんだけど。
いざ会話を始めてみると、自分がなんとまあその作品について語るのが下手なこと下手なこと。もう何周も読み返してるから作品の理解度だって高いだろうに、いざ会話でそれを伝えてみようとすると、難しいんだなって思い知らされて。
こういった経験にみなさんは共感してくださるでしょうか。
なんでうまく語り切れなかったんだろうって考えてみたら、この記事の最初の問題に突き当たったわけです。自分はこの作品が好きだけれども、その「好き」を他人に説明するのは難しいことなのだ、と。
とりあえず、この件についてはお友達に布教できたのでそれでよしとすることにしました。
振り返って、今度は創作の作者の側から同じことを考えてみます。
雨宿は、自分の作品は全部好きです。多少なりとも自信を持っていますし(でなきゃこんな活動してないよ!)、一人の読者になったつもりでワクワクしながらやっています。では、その「好き」をちゃんと説明できるでしょうか。
無理です。
作品どころか、キャラクターの一人に至るまでろくに語れないと思います。
例えば、『お嬢おか』は知名度も高く、読者が一番多い看板作品です。主人公である結子店長は雨宿が「俺の嫁」と称するほど愛してやまないキャラクターで、各話ごと、各コマごと、言動や表情に表された心の動きなんかも設定に基づきながらちゃんと考えて書いてます。考えて書いてはいる……のだが、それを誰かに説明しろって言われると、うまいこと言葉にできない。その他についても同様。作品を一番理解している(はず)の作者ですら、こうなんですよ。
時々、友人から「お前のマンガ読んだよ」って言ってもらえることがあります。親切な人はちゃんと感想まで添えてくれます。作者としてはそこまで強く意識していなかったシーンを印象深く挙げる人もいて、「へー、そういうのがウケるのか」と勉強になることも。ここで雨宿は得意気になって、エラそうに作品に込められたメッセージなんかを講釈垂れたくなります。
でもできない。
やっぱり最初の問題に突き当たる。作品のメッセージも、言い換えれば作者が伝えたいこと、僕が「好き」な部分ですから、説明するのが難しいみたいです。
ま、作者は作品に対して寡黙なほどよいですから、そっちの方がいいかもしれません。だけどね、友達がせっかく感想を述べてくれたってのに、ウンウンうなずくだけのおもちゃになっちまうのは良くないですよね!
今回の話題はこういった方々には至極どうでもいい話かもしれません。すなわち、自分の「好き」は自分一人の胸の内にしまっておけばいいって人たち、もしくは「『好き』にややこしい理由なんか要らないぜ!『好き』だから『好き』なんだ!」って人たち。もちろんそれでも構わないんだけれど、やっぱり僕はぺちゃくちゃ語り合いたい気持ちがある。何より、自分の作品くらいはちゃんと説明できるようになりたい!
この話題とは全く関係ありませんが、僕の師匠はおっしゃっていました「考える暇あったら手を動かせ、『手で考えろ』」と。つまりはこういうことです、「好き」をうまく説明する方法をあれこれ考えるくらいだったら、うまくいかなくても普段からひたすら「好き」を語っていけ、と。
みなさんも気が向いたら、どうでしょう。
特にないけど元気に活動中!
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次回もお楽しみに!