突然ですが、「TKG」ってご存知ですか?
そうそれ、今思い浮かべてるやつで合ってます。
「たまごかけごはん(Tamago Kake Gohan)」のことです。
その手軽さとうまさ故に多くの人に支持されている料理(と言っていいのか)です。そして市場を見れば、TKGのために作られた卵や、TKGのために作られたしょうゆ、専用タレなんかもあったりするのです。恐るべし、TKG。
と・こ・ろ・が、『余熱』の筆者たる僕はその現状に満足していない。それはなぜか、
みんなごはんのことなんかどうでもいいと思ってるからです。
TKG、TKGといいつつ彼らの意識は高栄養食である卵、発酵が作り出す魅惑の液体、しょうゆにしか向けられていない。肝心の、お米、これを軽視している以外の何物でもない!TK、TKである、彼らの意中にあるのは。こっそりご飯のかわりにクスクスを出したって彼らはTKGだとありがたがるに違いないでしょう。
「○○風××」と言われたらその料理は何ですか?そう、「××」ですよね。誰も「ミラノ風ドリア」が「ミラノ」という料理だとは思わないでしょう?日本語の料理名ってのは、一番最後についてる単語が重要なんだ。TKGはどうだ?「たまごかけ『ごはん』」、ほらね。
今回の『余熱』は「ごはんを楽しむためのTKG」をご提案する。かのエイブラハム・リンカーンはゲティスバーグでこう言った、「ごはん好きの、ごはん好きによる、ごはん好きのためのTKG」今ここに、それを見せつけるときがやってきたのではないか?TKGの極意……否、それはTKGではない、「たまご『つけ』ごはん」である!
やはり、これは料理と呼べるのだろうか?
卵黄と卵白をうまく分ける方法、分かりますか?卵にひびを入れたら、殻を完全に二つに割ってしまわず、少し隙間が空くようにそっと割る。そこから左右の殻に卵黄を行ったり来たりさせ、卵白だけを下の皿に落とします。
別にメレンゲが作りたいわけじゃないので、泡立つまでかき混ぜるのはやめましょう。トロッとした部分がなめらかになったら終わり。
卵黄はそのまま殻にインした状態で置いておきましょう。その方が洗い物が減る。
一部が固まって白くなるはずです。温泉卵のあの感じを目指して頑張ろう。
……別に生の白身が好きって人はやらなくてもいいんだけどさあ、卵がごはんにうまく絡まない上に、つけすぎると卵がごはんの表面をコーティングしてしまってごはんのおいしさが分からなくなるよ。
しょうゆは本当に数滴でいい。ほんのり香りがすればオッケーなんです。じゃぶじゃぶ注ぐそこの君、塩分の摂りすぎです。少し反省なさい。
お寿司をしょうゆにつける要領で卵にご飯をちょーっとだけつけて、食べる。するとどうだろう、ほんのり卵としょうゆの風味がする、これは間違いなくTKGの精神を受け継いでいる。しかしその味は、ごはんである。紛れもなくごはんである。
お米というものは素晴らしい。農家の方が丹精を込めて、八十八回農作業に汗を流したとき、はじめてできあがるものだ。この白く光る米粒の一つ一つから、それが伝わってくるではないか。今一度心を込めて、この言葉を口にする。
「ごちそうさまでした。」
……この調子で食ってたら卵がけっこう余った?そういう時は――
しょうゆ足して飲めばいいんじゃないかな。