第41号

オープニングエッセイ 雨宿りの小噺

「特殊相対性理論」っていうと超難しそうですが、ざっくり言ってしまえば簡単で、「時間が早く流れる時と遅く流れる時があるよね」という話です。楽しい時間はあっという間に過ぎてしまうし、つらい作業をしている間は時間がものすごくゆっくりに感じられたり。時間が遅く感じるのはあんまり楽しくない時が多いですが、そうでないこともあります。

何をするでもないまま、ただダラダラとしている時。周りには友人とかがいるんですが、これといって会話も無し。テーブルにはつまめるものが置いてあったりして、別に食べたいわけじゃないけど口が寂しいから定期的に手が伸びる。窓の外の環境音が聴こえてくる。

今月号の表紙イラストはそんな感じのシチュエーションだと思います。仲良く話せる仲間はいいですが、こんな時間を過ごせる仲間はもっといいですね。


最近の生活ではすっかりそういうのがなくなっちゃいました、残念。


『テラレジア・クロニコ』第5章予告

みなさまこんにちは。大統領秘書のロディヤ・ハイルモンドです。

こちらは好評連載中『テラレジア・クロニコ』あらすじ紹介です。


今日はいつもと違う格好で失礼して。といってもここ数カ月、毎回衣装替えをしていたけれどね。

見ての通り、これは軍服ですけれど、あたくしたちより上の世代の方々にとって、ある人には忌まわしく、またある人には苦々しい思い出が蘇る服装かもしれません。

もちろん、みなさまは分かりませんわね。今月からの内容を読めばお分かりになりますわ。


今月は第5章の予告です。既にストーリーは後半戦に入っていますが、ここまでお読みになったみなさまの感想はいかがかしら。ますます謎は増えるばかり……このお話はどこに向かっているのか?そしてあたくしロディヤ・ハイルモンドっていつ登場するのかしら?

……もしくは本当に没キャラなの?


第5章のキービジュアルはこちら。

ちょっと!ついにキービジュアルからアーク様とフェルド様がいなくなっちゃったじゃないの!!主人公がいないなんて、どうしてくれるのよ!

……カッカしても仕方ないわね。それにしても不穏なイラスト。遊園地のモチーフと、軍隊……?おっかないわね。


さっそくあらすじの紹介を……といきたいのだけれど、その前に少しだけ、テラレジアの歴史のお話をする必要がありますのよ。

ご存知の通りテラレジアは今から100年前に王政を廃止し、共和国として生まれ変わりました。それ以来大統領を首とした共和政府が統治を続けているんですが、一度だけ内戦に見舞われたことがあるんです。

1940年~1945年の「テラレジア内戦」と呼ばれるものね。「先の大戦」といえば、世界的には第二次世界大戦のことを指すでしょうけれど、それと時を同じくして起きたこの戦いがテラレジア人にとっての「先の戦い」なんですの。

内戦の構図は、簡単に言えばナチスの息がかかったファシストと、連合国が支援した共和政府の戦いですわ。これより少し前の時代、世界的にファシズムの思想が流行っていて、イギリスやフランスの国内にもファシストの勢力はあったそうですわ。テラレジアも例外ではなくて、ちょうど近隣国のスペインでフランコの独裁政権が誕生した頃でしたから、ファシストはとても勢いづいていたんですわ。具体的には「テラレジア統一党」という勢力で、これが共和政府に対して蜂起しました。

ナチスドイツの軍事支援を受けた統一党は初期において旧式装備の共和政府を圧倒したわ。これをよく思わなかったのはアメリカをはじめとする連合国で、共和政府に対して兵器供与を行い、内戦は枢軸と連合の代理戦争という構図になったのね。

1945年にナチスの後ろ盾を失った統一党は南部グリム県で最後の拠点が陥落、指導者は一掃され、ここに6年に渡る内戦は集結しました。国土は荒廃し、多くの人が戦争や飢えによって倒れたわ。暗い時代ね。

あたくしたち若い世代にとっては歴史の出来事ですが、おじさん、おばさんたちにとってはれっきとした記憶であって、今でも内戦の話をするのははばかられるわ。だって、目の前の相手がその当時、どっちの陣営の支持者だったか分からないじゃない?うかつなことは言えないわよ。


長々と話して失礼いたしました。それじゃあこの歴史を踏まえて、あらすじ紹介といきましょうか。


物語はテラレジアを揺るがす大事件が発生するところから。

テラレジア陸軍第七師団の師団長バルザン・メフィストが配下の舞台を率いて南部グリム県で軍事クーデターに踏み切ったというのです。メフィストといえばかつてのテラレジア統一党を支持する要注意人物で、中央ではかねてより危険視する声がありました。

グリム県はカノンの出身でもあります。郷のお母様は大丈夫かしら。などと言っていたところにメフィストからの公式声明が。「王家の後継者アーク・ウエストへ告ぐ、未来の国家のためにここに貴殿を招請する」ですって。名指しでお呼び出し。相手は銃を持った軍人だけど、大丈夫かしらね。

ともあれ、政府側からもお呼び出しがかかったアーク様は行かないわけにはいきません。フェルド様と共にメフィストと対峙することに決めました。それと一緒に、カノンも高校卒業ぶりに故郷の土を踏むことにしたのでした。

これまでになく不穏な戦いの幕開け、二人は本当に大丈夫なのかしら。


さてと、今回の話に出てきた通り、あたくしが今日着ているのはテラレジア統一党の軍服でした。

この格好、似合ってるって思った?それはちょっと複雑な気持ちね。でも、鋭いわ。あたしね、軍服を着ていた頃もあるのよ。

勘違いしないでほしいんだけど、今は軍人じゃないわよ?それどころかあたくしは軍人ってニガテですわ。ほら、なんとなく思想とか使命感とか強いでしょ?そういうところが、ね。

あたしって傍から見れば職務に忠実で、堅気なところがあると思うかもね。でもそれは仕事だからそうしてるんであって、以外かもしれないけど、あたし自身には強い思想なんてないのよ。むしろ空っぽなくらい。やれと言われたらやりますわ、でもそれ以上の感情を抱くことはないわね。たぶん、傷つきたくないのかも。


……ええと、何の話だったっけ?まあいいや。

ますます盛り上がりを見せる『テラレジア・クロニコ』を今後もよろしくね。それと……見眼麗しい案内役のことも、ね!


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