第30号

オープニングエッセイ 雨宿りの小噺

雨宿は男の子なので、豪華七段飾りのひな人形に憧れたりはしなかったのですが、やはり女の子となると一度は憧れるものでしょうか。

立派でいいですよね、ひな人形。クリスマスツリーの大きいのがほしくなるのと同じなんだろうか。無論、それだけ立派なものになるとそれ相応にお高かったりして、親御さん的には大変でございます。

やっぱり「結婚」っていうテーマがいいのかな。ウェディングドレス屋さんの店先に飾ってあるドレスに女の子が貼りついて眺めてるのを見たことあるし、それと似たようなものかもしれません。

昨今は伝統的な価値観が見直されつつありますので、こんな話をしているとどこからかお叱りが飛んできそうな気もしますが、ある意味、小さな子供の時くらいはそういうベタベタのベタなものに憧れを抱くのもいいことだと思うんですよ。(ガキんちょの頃からヘンにひねくれた性格してると、どこぞの誰かみたいにひん曲がった人間に育ってしまいますからね……耳が痛い。)


なにはともあれ、美しい人形飾りと共に春の訪れを祝うのはいいことです。

そう言いつつ、雨宿も春の訪れを祝ってスーパーでひなあられを買い込みます。


『お嬢おか』新章予告!

2023年の最初に予告していた通り、4月号より『お嬢おか』中編第二弾がスタートします!

まずはキービジュアルを公開!

お嬢店長おかしまし 1999東京


あらすじ

1999年1月。曇天の東京駅に一人の男が立っていた。神之目満爾――神之目不動産会長の息子にして、同社の役員である。彼は社運を懸けた大事業「御幸町再開発計画」を成功に導くべく東京支社に出向してきた。今明かされる、もう一つの「神之目」の物語――。


「1999東京」!あ、ちなみに読み方は「ナインティーン ナインティナイン とうきょう」ですけど、作者はずっと「東京編」て呼んでました。そもそもタイトルだっていつも「おじょおか」って呼んで、フルネームを忘れかけたことすらあるからね。

1999東京編の主人公は結子店長のお父様、神之目満爾さんです。本編では第9話が初登場、それ以来ちょくちょく出演しているものの、あんまり感情を表に出さない性格をしています。本作はその満爾を主人公とし、彼の独白を中心に進んでいきます。


ストーリー

『1999東京』編の舞台は『お嬢おか』本編から離れ、時は遡って1999年の東京都。1月の冷たい雨が降る東京駅に、スーツ姿の一人の男性が立つところから始まります。

彼の名前は神之目満爾(かみのめみつじ)。そう、のちの結子のお父様です。神之目不動産の役員として実父でもある会長の下で勤めていた満爾は、今日からとあるお仕事のために本社のある都原から東京支社へ期限付きで出向してきたのでした。

そのお仕事とは社運を懸けた大事業「御幸町再開発計画」を成功に導くこと。東京都千代田区御幸町(みゆきちょう)は古い建物が多い地区で、バブル期に再開発計画が持ち上がっていたものの、不景気でしばらく凍結していたのがやっと動き出したというところでした。(御幸町は架空の地名。丸の内とか大手門の辺り。東京の地図が分からない人は、ざっくり東京駅と皇居の間だと思ってください。)

計画を主導する神之目不動産の役員として、そして会長の実子として、大役を演じることになった満爾。そんな彼に、奇妙な縁がとある女性を引き合わせるのでした。

激動の1990年代を飾る最後の年に、大都会東京で幕を開ける、もう一つの「神之目」の物語。


1999年っていうと、世間ではノストラダムスの大予言とかが流行ってた時代ですかね。2000年問題なんてのも。あとはねえ、携帯電話のiモードってやつがありまして。

ちなみに雨宿は21世紀のはじめに生まれていますので、20世紀というものは知りません。今や90年代を知らない人間が90年代を創作する、そんな時代に来ているんですねえ。


登場人物

1999東京編は本編と登場人物も異なっています。結子店長たちはまだ生まれてないからね。主な登場人物は以下の三人。

神之目満爾かみのめみつじ

神之目不動産会長の息子で、現在は同社の役員を勤めている。「御幸町再開発計画」のために一定期間東京支社に出向してきた。


万堂幸ばんどうみゆき

大手ゼネコン「万堂建設」創業家当代の末娘。満爾の恋人。


末広時子すえひろときこ

女優。ドラマからバラエティまで幅広くこなし、多くの世代に人気を博している。


なんというか……

登場人物紹介の時点でヤバい匂いしかしないぜ。

『お嬢おか』が「お嬢店長、結子があれこれするお話」だとしたら、本作は『お嬢おか』じゃないです。

ぜひとも最後まで見届けてくださいませ。


本作のプロローグとなる『お嬢おか 特別編5』を公開!

なんと!4月号からの本編の公開に先駆けて、今月号では『1999東京』編のプロローグとなる『お嬢おか 特別編5』を公開します!

はじまりは2020年の東京。夏休みに家族の仕事に合わせて東京の別宅にやってきた結子。タワマンの最上階から街を眺めるなんて、お嬢様ですわね。

東京見物としてあちこちを回った結子と付き添いのじいや。(このお話に新型コロナウイルスの流行はありません。)この日はおしゃれなオフィス街、千代田区御幸町を見ることにしました。

ベンチで一休みしていた結子は、通りすがりのある人から興味深い話を聞かされるのですが……。

続きはこちら!



余談 本作の時間の流れ方ってどうなってんの?

1999年のお話ということですが、一体『お嬢おか』の世界って時間がどう流れてるんでしょう?

時空の考え方はご長寿作品ならどれもが当たる問題です。

『こち亀』の場合登場人物は歳を取らないまま、時代は常に現代。

『サザエさん』は連載初期は戦後っぽい内容もあったはずなんですが、アニメになってからはある程度時代が進んで昭和の途中くらいで止まってた気がします。登場人物は歳を取らないけど、イクラちゃんはちょっと成長してたはず。

『名探偵コナン』は工藤新一が江戸川コナンになってから1年以内とのことですが、時代は常に現代なので、過去の事柄も一緒にどんどん進んでいるみたいです。つまり工藤新一が小さくさせられたのは連載当時の1994年のことですが、今では「今年から1年前」の出来事になってます。

『ドラえもん』のドラえもんが元いた未来の世界は、連載当時は21世紀だったものの、今では22世紀という設定になってるみたい。


他の作品の話はこれくらいにして、『お嬢おか』の場合はどうかというと「普段は現代に沿って登場人物は歳を取らないけど、過去の話をするときは現在を連載開始年の2020年に固定する」という方式です。

作品のコンセプト上、現代社会のタイムリーな内容をお届けすることがあるので時代は常に現代。登場人物も歳を取らない。ところが過去の話をするときは2020年を現在として、そこから何年前かで考えてます。つまり、神之目結子は「2020年に17歳の高校2年生」ということにして考えます。

1999年というと2020年の21年前、その時に満爾が30歳てことは……歳がバレますね。

ふーん、てことは結子が順調にお年を召していたとしたら、今年(2023年)で二十歳ってこと!?もうお酒も飲めちゃうんだ……。

……未来の話をするのはやめましょう。お嬢おか未来編はやりません。本編では絶対。


『お嬢店長おかしまし 1999東京編』は4月2日より連載開始!お楽しみに!


連載作品・記事


お知らせ

『お嬢おか』新キービジュアルお披露目!

2021年4月より、実に2年ぶりに『お嬢おか』のキービジュアルが新しくなりました!早速ご覧ください!

あらまあ結子ちゃんたら、こんなにかわいくなって……。

雨宿は気付いてしまったのです……。雨宿のTwitterでは気分でイラストを描いて投稿しているのですが、結子店長を描いた時だけ明らかにみんなの反応が良いのです。

やっぱみんなも好きなんだね~。主人公が一番人気なのは作者としては思惑通りというわけですから、嬉しいことです。

今後とも結子店長を、本作をよろしくお願いします!


第30号

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