第20号
1929年ウォール街大暴落(Wall Street Crash of 1929)

1929年10月24日、世界一の金融街であるウォール街のニューヨーク証券取引所で突如、株価の大暴落が発生した。この事件はその日の曜日にちなんで「暗黒の木曜日(Black Thursday)」とも呼ばれる。そこから数日をかけて暴落は続いたため、次いで「暗黒の金曜日」「暗黒の月曜日」、そして破局的な暴落が発生した「暗黒の火曜日」へと続く。

それまで「狂騒の20年代」と呼ばれ、株高が続いていたアメリカ経済は大きな打撃を受け、1932年までにダウ工業株平均は最高値から89%もの下落を見せる。影響はアメリカ国内に留まらず、世界経済に大きな衝撃を与え、後に「世界恐慌」と呼ばれる大不況の引き金となった――。

というのは一般的な学説。世界史の授業でこのように習った者も多いだろうが、世界恐慌はあらゆる要因が連鎖的に発生し、不況が不況を呼んだ結果の産物であり、「世界恐慌のきっかけは1929年のウォール街大暴落なのか」という議論は未だに見解が分かれる。

しかしながら、少なくともこの大暴落の後にアメリカ経済は未曽有の不況に突入したことは確かであり、恐慌の象徴的な事件として「暗黒の木曜日」が支持されていることは言うまでもない。そして、その恐慌は巡り巡って人類史上最大、二度目の世界戦争を引き起こす――。


オープニングエッセイ 雨宿りの小噺

先月はちょっとしたお出かけに行ってきました。

そうして知ったことといえば、日本にはどこにでも桜があるんですね。少し遅めの花見をあちこちですることができました。

……なんて、思ってたんだけど、ふと気付いたことがあって。

「これ、桜だから目立ってるだけで、どこにでもあるものなんていっぱいあるじゃん。」

そうです、つくしだってタンポポだって電信柱だってマンホールの蓋だってどこにでもあるんですよ。ただ、あんまり気にしてないだけで。

ありふれたものこそ見落としてしまいがちだけど、少しだけ目を向けてみると「おっ、ここにもいたのか。また会ったな。」てな感じで親近感が湧いてきたりして。


プロの作家先生でも誰でもみんなそうだと思うんですが、机の上で資料と向かっているだけじゃいいアイデアって思いつかないんですよね。僕の場合そういう時は散歩します。周りの景色に目を向けて、普段は行かない道を進んだりして、別に面白いものを見つける必要はないのです、だらだら歩いてるだけで頭に豆電球が光る時があるんです。

今日も行き詰まったので散歩に出かけます。道端の顔なじみに挨拶をしながら。


『お嬢おか』初の中編!の予告!!!

そろそろ夏が来そうだ!

ということで!

『お嬢おか』中編やります!

あらすじ

中辻市の中心市街に位置する中辻商店街。商店街振興組合が毎年開催する「中辻夏祭り」はこの街の風物詩!……ところが今年はその夏祭りが開催の危機!?窮地を脱するべく名乗りを上げた結子店長、数々の難題を解決し、みんなの夏祭りを守ることはできるのか……!?アカデミックだがしや日常コメディ、異色の夏祭り編開幕!


以前から予告していた『お嬢おか』中編がついに来月号から連載開始です。4話にわたって夏祭り開催のために奮闘する結子店長と街の人々を描きます。キービジュアルでもお披露目している店長の新衣装にもご注目。

日常系作品ならド定番の夏祭り回、僕たちも当たり前に楽しむ華やかなお祭りの陰で人知れず繰り広げられる努力に思いを馳せつつ、乞うご期待!!!

『お嬢店長おかしまし 商店街夏祭り編』は6/5更新の「雨宿拾遺物語」第21号より連載開始!


前回までの『鐵軌の帝國』

(肘掛けの付いた椅子に白いスーツの男が座って、背中をこちらに見せている。男は口にパイプを咥えている。)

(不意に、男はパイプを取って語り始める。)

「いやどうもはじめまして。あなたは本作を楽しんでおられるでしょうかね。……いえ答えは結構ですよ、あなたがどう答えようがわたくしはここであらすじを紹介するだけですからね。」

「わたくしが誰かということは気にする必要などありませんよ、なぜならわたくしだってあなたのことを一切合切存じ上げませんから。あなたはどこぞのWebフリーマガジンの編集者が今朝何時に起きて何を食べたかとか、お気になさいますか?……失礼、無駄なおしゃべりです。」

「さて……時は非情です、あれだけ読んだ物語もひと月が過ぎれば内容が曖昧になってしまう、あなたもそうではありませんか?ですからわたくしがここに居るんですよ。前回までの『鐵軌の帝國』をおさらい致しましょう。」

「物語の主人公、ロバート・グレイヒルはカリフォルニアのサクラメントで電信技士をしていましたが……仕事の腕に反して処世は不器用な性のようですね。彼は叔父の紹介でジョージ・ウェスティングハウスという男から仕事の依頼を受けます。そのものずばり『送電網の稼働を妨げる時化(しけ)を抑えてほしい』とのこと。」

「叔父の紹介である以上断ることができなかったロバートは、サンフランシスコ、ロサンゼルス、と道行く中で三人の人物に出会い行動を共にするようになりました。謎深きインディアンの娘リニヤキワニ、合衆国を視察に訪れた日本の軍人岡田稲熊、術士の名家の娘でロバートの昔の知り合いアンジェラ。ロバートを中心に行動を共にしたはいいが衝突の絶えない一行なんですねこれが。」

「時化を抑える研究のために更なる調査を必要としていたロバートはアリゾナの大地にあるという時化の異常発生する土地『大きな穴』の存在を知り、この地で研究を続けることを決意しました。三人も旅の同行を決意したはいいが西部アリゾナ準州と言えば噂に聞く危険な開拓地。その旨手紙で叔父上に伝えた彼は激励と共に叔父上愛用の回転式拳銃を受け取ったのでした。」

「列車に乗り込み四人の旅は続いていく。乾燥し不毛な荒野で彼らを待ち受けているものは何でしょうか。第二章に続きます。」

「ところでそこのあなたはもしやこの作品を読んでいませんね?……ええ勿論わたくしも気立てのよい結子お嬢は好きですよ、ですがそればかりでは少々勿体ないですね。言うなれば――素晴らしい文学作品がぶどう酒のように甘美なものだとすれば、この作品は水です。しかしあなた水というものはタダで飲めるからよいですよ。」

「ではわたくしはこれで失礼。お互い川の流れゆくままに、再びめぐり合えたならその時は別な話を致しましょう。」


連載作品・記事


お知らせ

特にありませんが、今月も頑張っております。

そういえば5月と言えば、雨宿拾遺の誕生月でございます。ささやかにお祝いいただけたら幸いです。


第20号

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次回もお楽しみに!